通関士とは:通関書類を審査し、記名する専門職
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通関士は、通関業法に基づく国家資格者で、通関業者の営業所で、輸出入の申告書類などの内容を審査し、記名する役割を担います。通関業者は、営業所ごとに通関士を置くことが求められています。通関士が審査した書類は、関税分類、課税価格、関税率、他法令の確認、原産地の取扱いなど、関税法令に基づく判断を反映したものとして、税関へ申告されます。この仕組みにより、通関業者は荷主に代わって手続を行う専門事業者としての信頼を支えています。
通関士の人数は、税関が毎年4月1日現在の値を公表しています。令和8年(2026年)4月1日現在の通関士は8,372人で、通関業従業者の合計は16,945人です。通関業者の営業所は全国に2,042か所(令和7年4月1日現在)あり、各営業所に通関士が置かれています。資格者の人数は、通関業界の規模と人材の厚みを示す指標です。
| 時点(各年4月1日現在) | 通関士数 | 備考 |
|---|---|---|
| 2017年 | 7,848人 | 税関の推移表に掲載された値 |
| 2023年 | 8,491人 | 2017年以降の推移表のなかで最大の値 |
| 2026年 | 8,372人 | 通関業従業者の合計は16,945人(通関士以外は8,573人) |
2026年10月時点、公表資料に基づく。最新情報は各公式ページで確認してください。出典:税関 カスタムズ・アンサー8101(通関士数の表)。税関管内別の人数は通関業と保税制度の全体像に掲載しています。
通関士の業務は、書類の審査にとどまりません。荷主からの相談への対応、関税分類やEPAの適用可否の検討、税関との折衝、社内の若手への指導など、制度の知識を活かした仕事が含まれます。通関業界の全体像は通関業と保税制度の全体像、事業者側の事実項目は主要通関業者・フォワーダーの比較表をご覧ください。
通関士試験の科目と、受験者数・合格率の推移
通関士試験は、税関が毎年実施する国家試験です。試験は、通関士として必要な知識と能力を有するかどうかを判定する目的で行われ、試験科目は通関業法、関税法等(関税法その他関税に関する法令)、通関実務(通関書類の作成要領その他通関手続の実務)の三つです。試験合格のためには、各試験科目とも、定められた合格基準を満たす必要があります。受験資格に、年齢や学歴などの制限は設けられていません。
直近の二回の結果は次のとおりです。税関の結果概要によると、第59回試験(令和7年10月5日実施)は、願書提出者8,205人、受験者6,322人、受験率77.1%、合格者954人、合格率15.1%でした。前回の第58回試験(令和6年10月実施)の合格率は12.4%で、合格者は759人でした。
| 回(実施年) | 願書提出者 | 受験者 | 合格者 | 合格率 |
|---|---|---|---|---|
| 第58回(令和6年10月) | 8,024人 | 6,135人 | 759人 | 12.4% |
| 第59回(令和7年10月5日) | 8,205人 | 6,322人 | 954人 | 15.1% |
2026年10月時点、公表資料に基づく。最新情報は各公式ページで確認してください。出典:税関「通関士試験」の結果概要(第58回、第59回)。令和8年の第60回は、結果が公表された段階で税関の公式ページに掲載されます。
合格率は、年によって幅があります。出題内容の難易や、受験者の層によって変動するため、1年分の数字だけで試験の難しさを判断するのではなく、複数年の推移を見る必要があります。また、合格率は、科目別の合格者の組合せや、一部の科目の免除を受けた受験者の存在によっても影響を受けます。税関の結果概要には、科目別、試験地別の数字も掲載されているため、詳しい内訳は税関の第59回通関士試験のページで確認してください。
試験の概要、願書の受付期間、試験地などは、毎年、税関が試験案内として公表します。受験を検討する場合は、最新の案内を税関の通関士試験のページで確認してください。
AI・自動化で変わる通関士の業務
通関業務のデジタル化は、通関士の仕事の中身を変えつつあります。NECの通関プラットフォームは、生成AIによるAI-OCRで書類をデータ化し、AI税番判定サポートで税番候補と根拠を提示し、関税計算書システムで関税・消費税の計算とNACCSへの申告データ作成・連携を行います。NECの公式ページには、導入した企業の効果として、入力作業の負担の減少により、経験やスキルの少ない社員も、より高度な案件を担当できるようになり、業務品質の向上や属人性の排除につながった、という趣旨の紹介が掲載されています。
Shippioは、2025年9月に提供を開始したAI通関クラウドのShippio Clearについて、AI-OCRの読み取り精度が97%であること、グループの通関会社である協和海運株式会社と共同開発したことを公表しています。同社は、この共創により、確認作業を1/10に短縮し、業務工数を70%削減したと発表しています。これらは提供元が示す条件付きの数字であり、すべての事業者に当てはまる実績ではありません。AIデータ株式会社は、自社の導入効果の数値は想定値であり実績ではないと明記しています。詳細は通関・貿易DXツールの比較表をご覧ください。
これらのツールが担うのは、書類の読み取り、候補の提示、計算、データ作成といった、定型的な部分です。通関士の仕事のうち、関税分類の最終判断、原産地規則の適用判断、税関との折衝、荷主への説明、事後調査への対応などは、法令の解釈と責任を伴うため、引き続き人が担う領域です。一方で、定型作業の比重が下がれば、通関士の時間は、判断が分かれる案件や、荷主への助言、社内の体制整備、AEO対応といった業務に振り向けられる可能性があります。これは業界の一般的な見通しであり、個別の事業者の状況を示すものではありません。
通関士が将来どのような役割を求められるかは、ツールの普及度と、各社の業務設計によって変わります。ツールを使いこなして、確認と判断に集中できる人材と、制度の変更を荷主に説明できる人材は、いずれも、通関業界で求められる素養と考えられます。
年収の公表統計をどう読むか
通関士の年収については、厚生労働省の職業情報提供サイト(jobtag)に、通関士の職業ページがあります。このページには、賃金構造基本統計調査などをもとにした年収の目安や、求人賃金、就業者数といった統計が掲載されています。具体的な数値は更新されることがあるため、本ページでは転記せず、jobtagでご確認いただく形にしています。
ただし、職業別の公表統計は、職業分類単位で集計されることが多く、通関士だけの値とは限りません。実際の年収は、勤務する事業者の規模、勤務地、資格手当の有無、経験年数、役職などによって幅があります。そのため、年収の水準を判断する際には、複数の統計と、各社の募集要項の記載を照らして確認する必要があります。
当サイトでは、年収の水準を断定せず、公表統計の範囲と注意点のみを示します。最新の数値は、jobtagの通関士のページでご確認ください。
関連資格:通関士とあわせて学べるもの
通関士のほかに、貿易や通関に関連する資格・学習の機会があります。
- 貿易実務検定:貿易の実務に関する知識を測る検定で、ジェトロ(日本貿易振興機構)のオンライン講座「貿易実務シリーズ」の案内では、基礎編がC級、応用編がB級の受験対策に役立つとされています。講座の修了は資格試験とは別の扱いで、検定の参考書で補う内容もあると案内されています。
- ジェトロの貿易実務講座:貿易の流れや実務の基礎を学べる講座が、ジェトロの各地の事務所や、オンラインで提供されています。
- AEO制度に関する学習:税関のAEO制度のページには、モデルとなる法令遵守規則や手順書、内部監査のチェックシートが公開されており、体制整備に携わる担当者の学習資料として活用できます。制度はAEO制度のメリットと取得実務で解説しています。
- EPA・原産地規則に関する学習:経済産業省や税関が、EPAの概要、原産地規則、自己申告制度の手引きを公開しています。実務は原産地証明とEPA活用の自動化で整理しています。
これらは、通関士の資格を補い、実務の幅を広げるための選択肢です。いずれの資格や講座も、取得により特定の就職や収入が約束されるものではありません。各制度の概要と最新の情報は、実施する団体の公式サイトで確認してください。
キャリアの選択肢と、求人動向を見る視点
通関士の資格を活かせる職場は、通関業者を中心に、複数あります。ここでは、職場の種類ごとに、業務の特徴を整理します。
- 通関業者・総合物流事業者:輸出入の申告の審査と記名、荷主の相談対応を担います。主要通関業者・フォワーダーの比較表に挙げた事業者のように、倉庫、港湾運送、国際輸送と通関を併せて営む事業者では、通関士が荷主営業や保税倉庫の運営と連携する場面もあります。
- フォワーダー:航空・海上の利用運送を行う事業者で、通関を自社または提携先で行います。海外の拠点との連携や、書類の確認が多い職場です。
- 荷主企業の貿易部門:自社の輸出入を担う部門で、通関業者への依頼内容の確認、関税分類やEPAの検討、社内の法令遵守の体制づくりに、通関の知識を活かします。
- デジタルサービス・コンサルティング:通関・貿易DXのサービスの開発では、通関会社と共同で機能を開発する例があり、実務の知識が求められます。
求人の動向を見る際には、次の点を確認することをおすすめします。第一に、公的統計(jobtagなど)の数値は職業分類単位であること。第二に、求人情報は、勤務地や事業者によって条件が大きく異なること。第三に、通関士の人数は2023年をピークに2026年まで減少しており、通関業者数や営業所数も緩やかに減少している一方、書類のデジタル化により、必要となる人材の役割が変わっている可能性があることです。こうした変化の方向は、税関の人数の推移と、各社の公表する取組みを継続して確認することで把握できます。
キャリアの選択は、個人の状況と目標によって異なります。通関士の資格の取得を検討する場合は、試験の公表情報と、希望する職場の募集要項の両方を確認してください。
まとめ:資格の価値は、判断力と制度理解にある
通関士は、通関書類を審査し、記名する国家資格者で、令和8年4月1日現在、税関の公表で8,372人です。試験科目は通関業法、関税法等、通関実務の三つで、第59回の合格率は15.1%、第58回は12.4%でした。AI-OCRや税番判定支援などのツールが普及しつつあり、定型作業の比重が下がる一方、法令の解釈や最終判断、荷主への説明といった領域は引き続き人が担います。年収などの統計は職業分類単位であり、個別の水準を示すものではありません。
通関業と保税制度の全体像は通関業と保税制度の全体像、デジタルツールの詳細は通関・貿易DXツールの比較表をご覧ください。運営方針は運営者情報・編集方針にまとめています。
