通関業と保税制度が支える、輸出入の実務
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日本の貿易は、貨物が国境を越えるたびに税関の審査を受けることで成り立っています。輸出入される貨物は、関税法に基づいて税関へ申告し、必要な検査や審査を経て許可を受けなければ、輸出も輸入もできません。この申告や審査対応を荷主に代わって行う専門職が通関業者であり、貨物を許可前に一時的に置いたり、加工したりするための場所を定める仕組みが保税制度です。
本サイト「保税倉庫・通関DXレポート」は、通関業と保税制度、そこに関わる物流事業者やデジタルサービスを、税関・経済産業省などの官公庁資料と各社の公式サイトだけを根拠に整理する業界レポートです。ページ構成は次のとおりです。本ページでは制度と業界の全体像を扱い、主要通関業者・フォワーダーの比較表、通関・貿易DXツールの比較表、AEO制度、原産地証明とEPA、保税倉庫の仕組みと経営、通関士の資格とキャリアへと進みます。
通関業界は、物流業のなかでも制度の影響が大きい分野です。申告の様式、関税率、原産地規則、保税の手続はすべて法令で定められ、改正のたびに実務が変わります。同時に、申告データの大半はNACCS(輸出入・港湾関連情報処理システム)を通じて電子的にやり取りされるため、システム面の変化も通関の現場に直結します。制度とデジタルの両面を押さえることが、この業界を読む出発点になります。
関税法と通関業法:二つの法律の役割分担
通関まわりの法令は、大きく二つの柱で理解できます。一つは関税法で、貨物の輸出入に関する申告、検査、許可、関税の納付、保税地域の制度などを定めています。もう一つは通関業法で、他人の依頼を受けて通関手続を代行する事業者、すなわち通関業者の許可、通関士の設置、業務の範囲といった事業の規律を定めています。関税法が「貨物と手続のルール」だとすれば、通関業法は「手続を代行する事業者のルール」にあたります。
通関業者は、通関業法に基づく許可を受けて、輸出入申告などの代行や、それに付随する書類作成、税関への相談対応を担います。許可を受けた営業所ごとに、通関士を置くことが求められます。通関士は、通関書類の内容を審査し、記名して申告の適正を担保する国家資格者です。通関士の資格や試験については、通関士の将来性・資格・キャリアで詳しく扱います。
荷主の側から見ると、自社で通関業の許可を取らずに輸出入を行う場合、通関手続は通関業者に委託するのが一般的です。委託先を選ぶ際は、取扱貨物の種類、対応できる港や空港、AEO(認定事業者制度)の認定状況、デジタルサービスの有無などが比較の軸になります。これらの軸で主要事業者を横並びにした表は、通関業者・フォワーダーの比較表にまとめています。
また、関税分類(HSコードに基づく税番の判断)や関税率、EPA(経済連携協定)の適用可否は、関税法令の解釈にかかわる専門的な判断です。判断に迷う場合の公式な手段として、税関には事前教示制度があります。制度の概要は、税関のカスタムズ・アンサー1202「品目分類の事前教示制度について」で確認できます。
通関業者数と通関士数:税関が公表する業界の規模
通関業界の規模を示す基本的な数字が、税関の「通関業者の件数」と「通関業従業者数」です。税関のカスタムズ・アンサー9104によると、令和7年(2025年)4月1日現在の通関業者数は988社、通関業務を行う営業所は2,042か所です。直近5年の推移は次の表のとおりで、営業所数は2,060か所台から2,040か所台へと緩やかに減少し、通関業者数は970社台から990社前後の範囲で推移しています。
| 年(4月1日現在) | 通関業者数 | 営業所数 |
|---|---|---|
| 2021年 | 970社 | 2,062か所 |
| 2022年 | 974社 | 2,063か所 |
| 2023年 | 982社 | 2,049か所 |
| 2024年 | 996社 | 2,044か所 |
| 2025年 | 988社 | 2,042か所 |
出典:税関 カスタムズ・アンサー9104「通関業者の件数」。2026年10月時点で確認できる最新の掲載値です。
通関士の人数も、税関が毎年4月1日現在の値を公表しています。令和8年(2026年)4月1日現在の通関士は8,372人、通関業従業者のうち通関士以外の人数は8,573人で、合計は16,945人です。通関士数は2017年の7,848人から増加し、2023年に8,491人でピークとなったあと、2026年には8,372人となっています。
税関別の通関士数を見ると、東京税関管内が2,585人、大阪税関管内が1,724人、横浜税関管内が1,182人、名古屋税関管内が967人、神戸税関管内が891人、門司税関管内が677人、函館税関管内が197人、長崎税関管内が89人、沖縄地区税関管内が60人です。大都市圏の港湾・空港に通関士が集まる構造が、数字から読み取れます。一方で、通関業者の営業所は全国に2,000か所余りあり、地方港や空港にも通関の窓口が置かれています。
これらは公表されたストックの数字であり、個々の通関業者の売上や取扱件数ではありません。事業者ごとの規模や業態は、各社の公式サイトや有価証券報告書で確認する必要があります。当サイトの比較表では、確認できた事実項目だけを掲載し、確認できない数値は「公式サイト参照」と表記しています。
輸出入申告の流れと、通関業者が担う工程
輸入の場合、貨物が港や空港に到着すると、貨物は原則として保税地域に搬入されます。通関業者は、インボイス(送り状)、パッキングリスト、船荷証券(B/L)や航空運送状(AWB)といった書類をもとに、関税分類、課税価格、関税率、必要な他法令の確認を行い、輸入申告書を作成します。申告書はNACCSを通じて税関へ送信され、審査区分に応じて書類審査や検査が行われたのち、関税や消費税を納付して輸入が許可されます。許可を受けた貨物は、保税地域から搬出できます。
輸出の場合は、貨物の品名、数量、価格などを記載した輸出申告を行い、税関の審査・検査を経て許可を受けます。輸出許可を受けた貨物は、外国貿易船や航空機に積み込まれます。輸出では、関税の納付は通常生じませんが、輸出貿易管理令などに基づく貨物の該非判定や許可の確認が実務の重要な部分を占めます。
通関業者の仕事は、申告書の作成と送信だけではありません。次のような工程が積み重なっています。
- 書類の受領と内容の確認(インボイス、パッキングリスト、B/L、原産地関連書類など)
- 関税分類(税番)と関税率、EPA税率の適用可否の検討
- 課税価格の計算(運賃・保険料の按分を含む)
- 他法令(食品衛生法、植物防疫法、輸出貿易管理令など)の確認と必要書類の手配
- NACCSへの申告データ入力・送信、税関からの通知の確認
- 検査が指定された場合の立会いと対応、許可後の貨物引取りの手配
- 関税関係帳簿や申告書類の保管
こうした工程の多くが書類の読み取りと転記に依存してきたため、AI-OCRによる書類の読み取りや、HSコード候補の提示、NACCS形式でのデータ出力といったデジタル化が、通関業界のDXの中心テーマになっています。具体的なサービスは、通関・貿易DXツールの比較表で整理しています。
保税地域の5種類:貨物を置く場所の制度
保税制度は、外国貨物を輸入許可前の状態で保管・加工・展示できるようにし、貿易の円滑化と関税の確保を両立させる仕組みです。税関のカスタムズ・アンサー9203は、保税制度を保税地域制度と保税運送制度の二つに分けて説明しています。保税運送は、保税地域などの間で外国貨物を納税前のまま運送する制度で、税関長の承認が必要です。
保税地域には、次の5種類があります。税関の資料に沿って、主な機能と蔵置期間を整理します。
- 指定保税地域:外国貨物の積卸し、運搬、一時蔵置を行う場所で、コンテナヤードなどが例です。蔵置期間は1か月です。
- 保税蔵置場:外国貨物の保管、積替え、運搬を行う場所で、民間の倉庫や上屋が該当します。蔵置期間は2年で、延長が可能です。
- 保税工場:外国貨物を関税を留保したまま加工・製造できる場所です。蔵置期間は2年で、延長が可能です。
- 保税展示場:博覧会や展示会などで外国貨物を展示・使用する場所です。期間は税関長が必要と認める期間です。
- 総合保税地域:保税蔵置場、保税工場、保税展示場の機能を一つの地域内で併せ持つ場所です。蔵置期間は2年で、延長が可能です。
民間の物流事業者が運営する「保税倉庫」は、このうち保税蔵置場にあたります。保税蔵置場は税関長の許可を受けて開設され、許可を受けた事業者は、貨物の管理や帳簿の整備など、関税法に基づく義務を負います。仕組みと収益構造の詳細は、保税倉庫の仕組みと経営で扱います。
一次情報として、税関のカスタムズ・アンサー9203「保税制度の概要」と、保税ポータルが参考になります。
NACCSの役割:通関のデジタル基盤
NACCSは、入出港する船舶・航空機と輸出入される貨物について、税関その他の関係行政機関に対する手続と、関連する民間業務をオンラインで処理するシステムです。運営は、輸出入・港湾関連情報処理センター株式会社(NACCSセンター)が行っています。NACCSセンターの事業概要ページによると、システムは船舶・航空機の入港から、輸入貨物の到着、国内引取りまでの一連の手続、輸出貨物の運送引受けから積載までの一連の手続を扱います。第6次NACCS(2017年10月稼働)では、損害保険会社が利用者に加わりました。
通関業者にとってNACCSは、日々の申告業務の基幹システムです。民間のソフトウェアベンダーやクラウドサービスの多くが、NACCSとデータを連携させる機能を持っています。たとえば、書類をAI-OCRで読み取り、NACCS形式の申告データとして出力するサービスや、NACCSから受け取った許可通知のデータを蓄積して帳簿に活用するサービスなどがあります。当サイトでは、こうした連携機能を通関・貿易DXツールの比較表で、提供元の公式情報に基づいて整理しています。
NACCSの仕様は、更改のたびに入力項目や運用が変わります。令和7年(2025年)10月12日には、輸入申告に新しい項目が追加されました。通信販売貨物に該当するかどうかを申告し、該当する場合はプラットフォーム等コードを入力するもので、コードを入力するとNACCSがプラットフォーム名を自動表示します。この制度は、次の節で扱う越境ECの小口貨物への対応と関連しています。
NACCSの概要は、NACCSセンターの事業概要ページで確認できます。
越境EC・小口貨物の増加と、税関の対応
インターネット通販の拡大により、個人や小規模事業者が海外から商品を購入する機会が増え、税関が扱う小口の輸入貨物は多様化してきました。小口貨物は、一件あたりの価格が小さい一方で、関税分類、課税価格、他法令の確認、原産地の判断といった論点は大口貨物と変わりません。件数が多くなるほど、書類の転記や確認作業の負担が通関の現場に集中します。
この状況に対して、税関は申告項目の整備を進めています。税関のプラットフォーム等コード申請手続のページによると、令和7年10月12日から、輸入申告で通信販売貨物かどうかを区分して申告する運用が始まりました。区分は三つで、通常の通信販売貨物、フルフィルメントサービス(FS)を利用する貨物、それ以外に分かれます。通常の通信販売貨物ではプラットフォーム等コードの入力が必須とされ、FSを利用する貨物では任意で入力でき、それ以外の貨物では入力できないと定められています。
越境ECを扱う事業者にとって、この変更は、どのプラットフォームを経由した貨物かを申告に反映させる運用が必要になることを意味します。通関業者や荷主は、自社の取扱いがどの区分に該当するかを確認し、システムと社内手順を整える必要があります。具体的な判断は、税関または通関業者への確認が前提です。
越境ECの周辺領域は、関連サイトでも扱っています。販売側の実務は越境EC支援、転送サービスや個人輸入の関税計算は海外配送・転送サービスをご覧ください。
まとめ:全体像から比較表・各論へ
本ページで整理した要点は次のとおりです。通関まわりの制度は関税法と通関業法の二つが柱となり、通関業者は令和7年4月1日現在で988社、営業所は2,042か所、通関士は令和8年4月1日現在で8,372人と税関が公表しています。保税地域は5種類があり、民間の保税倉庫は保税蔵置場にあたります。NACCSは申告の基幹システムで、令和7年10月からは通信販売貨物の区分とプラットフォーム等コードの入力も始まりました。
次に読むページとしては、事業者を選ぶ視点なら通関業者・フォワーダーの比較表、デジタル化の視点なら通関・貿易DXツールの比較表、制度を深く知りたい場合はAEO制度や原産地証明とEPAをおすすめします。運営方針は運営者情報・編集方針をご覧ください。
