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関税の乱高下に勝つ、HSコード分類のAI活用と通関の備え

関税の乱高下に勝つ、HSコード分類のAI活用と通関の備えのイメージ

本記事は通関・保税制度と業界を公開情報から整理したものであり、個別の輸出入手続きや関税分類に関する助言ではありません。

ニュースの概要

Thomson Reuters Instituteの調査によると、国際貿易の担当者の72%が、関税の変動をもっとも混乱を招く規制変更だと答えた。前年は41%だったので、一年で大きく跳ね上がったことになる。技術への関心も急に高まっている。AIやブロックチェーンの活用を検討する組織は6%から40%に増えた。ところが、関税の変更管理に実際に技術を使っている組織は7%だけだ。HSコード(=品目を世界共通の番号で分類する仕組み)などの分類変更への活用も、ごく一部にとどまっている。関心は急増したが、現場への実装はほとんど進んでいない。この落差が、今回の調査でもっとも目を引く点である。

引用元: 関税変動を背景に、AIを活用したHSコード分類と通関コンプライアンスの需要が拡大(Thomson Reuters Institute)

分析・見解

72%という数字が示す、関税リスクの質的な変化

41%から72%への上昇は、単に関税率が上がったという話ではない。変わったのは、変化の頻度と予測のしにくさである。かつての関税は、数年に一度の交渉で動く「ゆっくり変わる前提条件」だった。いまは発表から適用までが数週間、ときには数日になる。しかも対象品目や原産地の条件が細かく書き換わる。担当者が疲弊するのは、税率そのものより、確認すべき項目が絶えず増えることにある。

同じ現象は過去にもあった。2018年の米中関税の応酬では、数千品目が対象に加わり、輸入企業は除外申請の手続きに追われた。あのときは一時的な緊急対応で済んだ。今回の調査が示すのは、緊急対応が常態になりつつあるということだ。

HSコードの一桁の違いが、数百万円の差を生む

HSコードは、世界共通の6桁を土台に、各国が独自の桁を足して使う。たとえば同じ電動工具でも、バッテリーを内蔵するか、別売りかで番号が分かれることがある。番号が違えば、税率も、適用される追加関税も変わる。

ここに分類の難しさがある。製品の仕様書を読み、通関の判断例と照らし、必要なら過去の事前教示(=税関が事前に示す公式見解)も確認する。熟練者の経験に頼る作業で、担当者が変わると判断がぶれやすい。AIが得意なのは、まさにこの部分だ。製品の説明文から候補の番号を挙げ、根拠となる条文や判例を添える。人が最終判断をするにしても、ゼロから調べる時間は大きく減る。

検討40%、実装7%という落差の正体

調査で興味深いのは、AIに関心を持つ組織が40%あるのに、関税管理で使っているのが7%という落差である。この差は、技術が未成熟だから生じているのではないと考える。むしろ、使える状態のデータが社内にそろっていないことが大きい。

品目マスタ(=取り扱う製品の基本情報の一覧)が部門ごとに別々で、同じ製品が三つの名前で登録されている。仕様書は紙やPDFに散らばり、過去の分類結果は担当者のメモに残るだけ。こうした状態でAIを入れても、精度は出ない。AIの導入以前に、分類の根拠を残す習慣が問われている。

本当の競争軸は、変更を検知してから動くまでの速さ

これから差がつくのは、分類の正確さだけではない。関税の変更を知ってから、自社のどの製品に影響するかを洗い出し、価格や調達先の見直しに反映するまでの速さである。変更の通知を人が目で追う方式では、数百品目を扱う企業ほど遅れる。変更の検知、影響品目の抽出、担当者への通知を一続きにつなげた企業が、同じ関税環境でも損失を小さく抑えられるだろう。

ビジネスへの影響

まず着手すべきは、品目と分類根拠の棚卸し

AI導入の前に、取扱品目の一覧と、それぞれのHSコード、分類した理由を一か所にまとめる。最初から全品目を対象にしなくてよい。輸入額の大きい上位二割の品目だけでも、効果は十分に見える。分類の根拠が文章で残っていれば、後からAIに学ばせる材料にもなり、担当者の交代にも耐えられる。

小さく試し、人の確認を残す運用にする

最初の一歩は、新規品目の分類候補をAIに出させ、担当者が確認する流れだ。全自動にはしない。誤った申告は追徴課税や、通関の遅れにつながるからである。過去に分類済みの品目で試し、人の判断とどれだけ一致するかを測ると、導入の可否を数字で判断できる。

関税変更に備える、部門をまたぐ連絡網

関税の変更が出たとき、調達、経理、営業が別々に情報を拾っていては遅い。誰が変更を検知し、誰が影響品目を洗い出し、誰が価格改定を判断するのか。この順番を事前に決めておくだけで、初動は大きく変わる。技術よりも先に、この段取りを文書にしておくことが、もっとも費用の小さい備えになる。

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